ソリューション事業局 ひと研究所
對馬友美子
近年、テジタルデバイスの進化などメティア環境の変化に伴い、生活者が細切れの時間でもメデイアやコンテン ツに触れられる機会が増え、あらゆる生活シーンに、あらゆるメティアが入り込んでいます。それを踏まえ、私たち ひと研究所では生活者の可処分時間を、テレビを含めた映像コンテンツに接触する可能性のある時間=「メティ アポテンシャル時間」と定義しました。「メティアポテンシャル時間」が1日のうちにどのくらい、どの時間帯にあり、その時の生活行動やメティア・コンテンツにどう接触しているかを分析しながら、テレビコンテンツ視聴の新たな 可能性を探っていきます。
ポイント
■メディアポテンシャル時間は、1日当たり平日10時間、土日12時間
■若年層は限られた時間に、より多くのメディア情報を消費。その消費量は実際のメディア接触時間量比の1.13~1.14倍
■若年層のメディア接触状況は、朝はテレビ中心、昼間自宅外で非映像メディア、夜は深くなるにつれテレビからテレビ以外メディアに移行する
生活者は1日24時間をどういう行動にどのくらい使っているのか、メディア接触を基点に当社のシンジケートデータ「MCR/ex」を使って算出してみました。
「MCR/ex」は特定の1週間、自身の生活行動を15分単位で記録してもらう日記式行動調査のデータベースです。
このデータを使って、生活行動時間を自宅内外問わず、以下の5つに分類しました。
この定義でいうと、①~④が、テレビを含めたあらゆるメディアに接触する可能性のある時間=「メデイアポテンシャル時間」となります。
注)今回の分類における「テレビ」とは、固定のテレビ受像機で放送された番組の視聴であり、テレビ受像機でインターネット経由で配信番組を見ているケースやスマホなどデジタルデバイスで配信されたテレビ番組を見ているケース(見逃し配信など)は「動画」として②映像メディア視聴 に分類されています。
また、生活行動は複数の同時行動が起きていますが、今回は1日のメディア接触可能時間の算出が目的のため、例えば、テレビを見ながら食事をしている場合は①テレビ視聴時間、ネット動画を見ながらSNSをしている場合は②映像メディア視聴時間、というように、同一時間内の複数行動については番号が若いほうを優先して算出しています。
「メディアポテンシャル時間」は平日1日10時間、土日は12時間
「メティアポテンシャル時間」量は12~69歳全体平均で、平日は1日当たり10時間22分(図1)、ちなみに土日は 12時間以上あることがわかりました。
平日の10時間22分のうち、①テレビを見ている時間は 3時間、テレビ以外のメティアを見ている時間は②映像③非映像合わせて2時間弱、④それ以外でメディアに接触可能と考えられる生活行動時間は約5時間半でした。生活者がテレビを含むメディアに接触できる時間量は思った以上にあるのではないでしょうか。
では、テレビを基点として、この3時間を維持しつつ、テレビを見られていない7時間強をどうやって取り込んでいくか、そのヒントを探ってみましょう。
テレビ視聴は全体(12~69歳)で3時間ですが、年齢別にみると、若年層ほどテレビが少なく、他のメディアヘの接触時間が多くなっています(図1)。
10代男女とMl (20~34歳男性)は、学校や仕事などの制限によりメディア利用が不可能な時間も多く、より限られた時間の中で選んでいるのは①テレビ視聴ではなく②十③のテレビ以外のメティアという現状にあります。
Fl (20~34歳女性)は①テレビ視聴の方がまだ多いも のの、②+③の他メティア接触時間もほぼ拮抗しています。また、④“ながら"でのメティア接触が可能なはずだけれど利用されていない時間が多いのも特徴です。
(図1)メディアポテンシャル時間量(平日・年齢別)
若年層は実際の接触時間量の1.14倍の情報を消費
では、実際にはどのくらいメディアを利用しているのか、
「正味のメディア消費時間量」を把握するため、メディア接触時間をすべて足しあげた総塁(のべ時間畢)を出してみました。
すると、M1は4時間4分のメデイア接触時間中に正味4時間37分、F1は4時間41分中に正味5時間20分のメディアを消費していることがわかりました。実際の接触時間量に比 して1.13~1.14倍を消費しているということになります(図2)。
【図2】メティア消費総時間量(のべ)/メデイア接触時間量との比較(平日・年齢別)
このように「タイムパフォーマンス」を求める傾向のある若年層にとっては、起きている時間を最大限有効活用できるようなメティアが、今後ますます存在感を増していくでしょう。
10代男女とM1(20~34歳男性)は、①テレビ視聴時間よりも②+③のテレビ以外のメディアに接触している時間が多くなっています。また、学校や仕事などの制限によりメディア利用が不可能な時間も多く、より限られた時間の中で選んでいるのはテレビではなく他メディアという現状にあります。
F1(20~34歳女性)は①テレビ視聴時間のほうがかろうじて多いものの、②+③の他メディア接触時間もほぼ拮抗しています。また、④”ながら”でのメディア接触が可能なはずだけれど現状メディアの未利用時間が多いのも特徴です。
この(図2)のグラフを、違う視点から見てみます。
若年層のメディアポテンシャル時間中、現在①テレビ視聴している時間と②映像メディア③非映像メディアを合わせたメディア利用時間量の合計は、それぞれ3時間強~4時間台です(図3)。
テレビコンテンツの新たな時間市場候補:「お昼休み」と「入浴中」
メディア接触時間菫から視点を変えて、接触時間帯を分析してみたとこる、新たにテレビコンテンツが入り込めそうなまとまった時間が取れるタイミングを探すと、「昼休み」が有力候補のひとつと考えられます。
最近、お昼の飲食店では、テーブルにスマホを置いて何らかの動画を見ながら食事をとる人の姿をチラホラ見かけるようになりました。
自宅外の動画視聴には通信制限がネックでしたが、最近は無料wi-fiスポットの増加や通信料無制限サービスの拡充も進んでいますし、今後は5G化など、外で動画をストレスなく見られる環境が整いつつあります。
ただ、職場や外食の場では自宅とは違ったさまざまな 制限があり、時間が細切れになりがちで、長尺のものは 選ばれにくいことも想像できます。その点を考慮した上で、 TVerや見逃し配信サービスの新たな視聴タイミングとして、「自宅外の昼時間」の開拓は検討に値するでしょう。
もうひとつ、まとまった時間がとれそうなタイミングに、「入浴中」があります。
最近は防水機能の進化で、ポータブルテレビやスマホ・タブレットなどのテバイスをより気軽にお風呂に持ち込める環境になっています。
入浴中のテレビやネット利用率を「MCR/ex」で確認したところ、まだスコア的には小さいながらも、ネット利用率がじわじわと上がっていることがわかりました。
大学生へのヒアリング調査で(※)、お風呂にスマホを持ち込みSNSや動画を見ているという人にその理由を聞くと、「単に湯船につかっているだけですることがないから時間がもったいない(女性・大学3年生)」。単なるスマホ依存ではなく、起きている時間を無駄にせず有効活用したいというニーズが表れていました。
先述の通り、若年層は実時間呈に比して1.13~1.14倍の情報を消費しています。彼らが起きているすべての時間を有効活用しようとするならば、入浴時間もその範疇に入ってくるでしょう。
IP同時配信が実現すれば、お風呂タイムがリアルタイム 視聴時間にもなり得ます。入浴時間の有効活用策としてのテレビコンテンツ視聴が、新たな商機となるかもしれません。
※ビデオリサーチ「テレビ・動画に関するインタビュー」2019年11月 首都圏大学生5人×3グループ
細切れの時間で、コンテンツ視聴意向を喚起・醸成する
「昼休み」と「入浴中」のほかには、まとまった時間をなかなか見つけにくいのが現状です。
しかし、まとまった時間でなくとも、細切れの時間をテレビコンテンツに興味が向くようにすることで、結果的にリーチにつなげられる可能性があります。
朝は若年層も自宅内のテレビ視聴が中心で、そこから通勤通学の時間は非映像メディア(与スマホネット)になっていきます。この傾向を踏まえると、例えば朝、情報番組の中で番組宣伝をしたあと、まだ記憶が新しい通勤・通学時間帯のSNSで朝の番宣内容と連動した情報を発信することで印象をより定着させたり、昼の時間を利用した見逃し配信視聴促進やSNSでのリアルタイム放送へのリマインドなど、生活者の行動タイミングに合わせたよりきめ細かな施策を実行する時間として活用すると有効かもしれません。
例)イメージ
また、細切れでも見られるダイジェスト版や、プラットフォーム側に倍速再生機能があることも、コンテンツが選ばれる理由になるかもしれません。
前述の大学生へのヒアリング調査でも、テレビか動画かを問わずコンテンツ視聴時には「時間短縮のために倍速で見る」「内容がわかる範囲でスキップしながら見る」という声をよく聞きました。
これも、あふれる情報量の中にある現代、生活者が限られた生活時間を有効活用するために行き着いた方法のひとつなのでしょう。
ポテンシャルのある時間のすべてがコンテンツ視聴に向いたシチュエーションにあるとも限りませんが、逆にポテンシャルがないと思っていた意外なタイミングに合わせた最適な情報提供を行うことで、新たなメティア時間市場を開拓することができるのではないでしょうか。
☆ビデオリサーチのレポート・コラム「VR Digest+」は こちら から
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