ひと研究所
渡辺庸人/吉池典子
1.コロナ禍で変化した生活行動と映像メディア視聴
いわゆる「コロナ禍」が始まった2020年春以降、生活者の生活行動やメディア利用は、それ以前と比べて大きく変化してきました。外出自粛によって「起床在宅時間」が大きく上昇し(図表1)、増えた在宅時間の暇つぶしや娯楽を人々が必要としました。その結果、コロナ禍前と比較して映像視聴時間やインターネット利用時間は多い状態が続いており、インターネット動画(ネット動画)の視聴時間は増加したまま定着している状況といえます(図表2)。
ひと研究所では、映像メディアであるテレビとネット動画の視聴時間が。コロナ禍前からどのように変化したかに注目し、生活者をパターン分けして特徴を探る分析を行いました。ここではその分析結果をご紹介しつつ、コロナ禍で加速した「動画時代」への歩みの中で、生活者に引き続き映像コンテンツを視聴してもらうために、何がポイントになるのかを考えたいと思います。
2.テレビ視聴からネット動画視聴にシフトする人々の特徴
テレビ視聴(リアルタイム)とネット動画視聴が、コロナ禍前からどのように変化したのかを質問し、その回答をもとに4パターンに分類しました(図表3)。この4パターンのうち、コロナ禍でネット動画が増加した「テレビ&動画増加層」と「動画シフト層」に注目し、特に“テレビ視聴からネット動画視聴にシフトした人々”である「動画シフト層」の特徴をみていきます。
動画シフト層の特徴1:未婚率が高く、単身世帯と、親と同居する独身の“大人”が多い傾向
属性では、「テレビ&動画増加層」と比較して「動画シフト層」は未婚率が高い傾向です(図表4)。さらに同居家族をみると、50~60代は「一人暮らし率」が高く、20~40代は 「親との同居率」が高くなっていました(図表 5)。一人暮らしや独身で親と同居している “大人’’、すなわち、テレビを家族視聴する機会が少ない人ほど、家族に気兼ねなく自由に好きなコンテンツが見られるネット動画に、よりシフトしやすいことが推察されます。
動画シフト層の特徴2:YouTubeやAmazon Prime Videoを好む傾向が強い
ネット動画のサービス利用時間でも差がみられました(図表6)「動画シフト層」は「テレビ&動画増加層」よりも、特にYouTubeを多く見ている傾向がみられました。そのほかに、Amazon Prime Videoも「動画シフト層」の方が多くなっています。逆に、NetflixやTVerなどは、「テレビ&動画増加層」の時間量の方が多くなっており、好む動画サービスの傾向が異なっていることが分かります。
動画シフト層の特徴3:動画シフトの要因に「楽しさ・楽しみ」
ネット動画視聴が増えた理由をみると、「動画シフト層」の方が「楽しいものを見たい」という回答割合が顕著に高くなっています(図表7)。在宅時間が増えて「退屈」をしのぐために映像コンテンツを見ていることは共通ですが、「楽しい」ものを求める心理には差があったようです。また、「動画シフト層」に、なぜテレビ視聴が減少したかを質問すると、テレビ番組を見ていても“楽しい気分になれなかった”ことがその背景にあることがうかがわれます(図表8)。このように、動画シフトの要因には生活者の「楽しさ・楽しみ」といった要素が大きく関連していることが分かります。
動画シフト層の特徴4:映像視聴をする際には、「何を見るのか」を最初に考える傾向が強い
映像視聴をする際の“ジャーニー”にも特徴がみられました。「動画シフト層」は他の層と比較して、「何を見るか」を最初に決めている割合が高くなっています(図表9)。つまり、まず映像コンテンツを具体的に想起して、その後に見るための機器や視聴方法(放送/ネットなど)を決めていく傾向がより強いということです。図表9をみると、「動画シフト層」をはじめとしたネット動画を視聴する人々(青系グラフの3タイプ)は、全般的に映像視聴をする際に「何を見るか」を最初に決める傾向が強くなっています。この「何を見るか」に関しては、「動画シフト層」でより強く傾向が出たわけですが、「動画敬遠層」もスコア自体は高いといえます。そのような‘‘あまりネット動画を視聴しない人々"も含めて、番組(コンテンツ)の想起力をアシストする施策(番組名、番組内容を知ってもらうこと)が視聴者獲得には重要であることを示唆した結果だといえます。
3.これからの「動画時代」に、映像コンテンツを視聴してもらうために
今後、ネット動画視聴は幅広い年代に広がっていくと考えられ、それにともなって視聴デバイスの種類は様ざまになり、 視聴生活シーンも広がっていくと予想されます。このような「動画時代」において、 テレビ番組やテレビ局由来の映像コンテンツを、生活者により一層視聴してもらうためには、一体何がポイントになっていくでしょうか。
まず、動画シフトのキーワードとして「楽しさ・楽しみ」が挙がりましたが、千差万別でもある人々の「楽しさ・楽しみ」 をより理解する必要がありそうです。 そして、そのニーズを満たすコンテンツであることが、これからより一層重要になっていくと考えられます。
実際にコロナ禍においては、様ざまな「楽しさ・楽しみ」を提供できたネット動画に多くの人が魅力を感じ、視聴時間が増加しました。つぎに、単身世帯や親と同居している独身の“大人”など、テレビの家族視聴をあまりしない人々が、 動画視聴をする傾向に進んでいくと考えられます。 テレビ番組という視点でいえば、そのような人々に番組を届ける(知ってもらう、興味を持ってもらう、見てもらう)ための施策が必要になっていくといえそうです。そして、動画を視聴する人ほど 「何を見るか」を最初に思い浮かべる傾向が強いことがわかりました。このことを考えると、テレビ番組であれネット動画のコンテンツであれ、生活者が映像視聴をする時に、いかにその頭の中にコンテンツを想起してもらえるかが、視聴を左右する大事な要素となっていくと考えられます。映像コンテンツの“想起力”が重要性を増していくといえそうです。
さらに、2021年はコロナ禍での動画視聴行動の拡大に加え、スマートフォンの安価な通信プランや5G利用が広がったり、テレビ番組のリアルタイムネット配信もスタートしたりと、人々が利用するサービスにも変化が起き始めたタイミングでした。 そして、“アフターコロナ”に向けて、人々は外出することが増加し始めています。すると今後は、 コロナ禍前よりも自宅外での動画視聴行動の増加も考えられます。 これからの生活者に映像コンテンツを視聴してもらうためには、 外出中にどのように動画を視聴していくのか、どのようなコンテンツや機能・UIだと快適に視聴できるかなども、 注目点になるといえそうです。
☆ビデオリサーチのレポート・コラム「VR Digest+」は こちら から
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